彗星(すいせい) 英語: Comet
彗星(すいせい)は、太陽の周りを回る天体(太陽系天体)の一種です。主な成分は氷(水や二酸化炭素、アンモニア、メタンなど)と、岩石や塵(チリ)です。その主成分から「汚れた雪玉 (Dirty Snowball)」というニックネームで呼ばれることもあります。
普段は太陽から遠く離れた、太陽系の外側(とても寒い場所)にいますが、太陽に近づく細長い楕円軌道を持っているものが多くあります。
彗星が太陽に近づいてくると、太陽の熱で表面の氷が溶け、液体を経ずに直接ガス(気体)になります(これを昇華といいます)。このガスと、一緒に放出されたチリが、彗星本体の周りをぼんやりとした大気のように包み込みます。これを「コマ」と呼びます。
さらに太陽に近づくと、太陽から吹き付ける強力な風(太陽風)や、太陽の光の圧力(太陽放射圧)によって、コマのガスやチリが太陽と反対側に吹き流されます。これが、ほうきのように見える長く美しい「尾 (Tail)」となります。
この姿から、日本語では古くから「ほうき星」と呼ばれています。尾は、太陽から遠ざかると消えていき、彗星はまたただの氷の塊(核)に戻って、太陽系の彼方へと旅立っていきます。
【もっと詳しく】
彗星の本体は「核(かく) (Nucleus)」と呼ばれ、大きさは直径数kmから数十km程度のものが一般的です。太陽から遠い位置では、核は活動せず、尾もコマも持たないため、地球から観測することは非常に困難です。
彗星の起源(故郷)は、太陽系の外縁部にある2つの領域と考えられています。
- エッジワース・カイパーベルト (Edgeworth-Kuiper Belt): 海王星軌道のさらに外側にある、氷の小天体が多数集まる領域。
- オールトの雲 (Oort Cloud): 太陽系全体を球殻状に取り巻いている、さらに遠方の領域。
公転周期が約200年以下の彗星を短周期彗星(カイパーベルト起源が多い。例:ハレー彗星)、それ以上(数百万年にもなるものもある)を長周期彗星(オールトの雲起源が多い)と分類します。
彗星の尾は、成分とできる仕組みによって、2種類に大別されます。
- ダストの尾 (Dust Tail / 塵の尾): 比較的重いチリの粒子が、太陽放射圧(光の圧力)で押し流されてできます。チリは太陽の光を反射して黄色っぽく見えます。彗星が通ってきた軌道に沿って、緩やかにカーブするのが特徴です。
- イオンの尾 (Ion Tail / プラズマの尾): ガスが太陽の紫外線などで電離(イオン化)したものです。これは太陽風(プラズマの流れ)の磁力線に沿って、太陽のほぼ真反対側にまっすぐ伸びます。CO+(一酸化炭素イオン)などが青白い光を放つため、青色に見えるのが特徴です。
これら2本の尾は、異なる方向へ伸びることが多く、彗星の姿をより印象的にしています。
■関連用語リスト
- 汚れた雪玉 (Dirty Snowball)
- 核 (Nucleus)
- コマ (Coma)
- 尾 (Tail)
- ダストの尾 (Dust Tail)
- イオンの尾 (Ion Tail)
- 太陽風 (Solar Wind)
- 太陽放射圧 (Solar Radiation Pressure)
- 昇華 (Sublimation)
- 楕円軌道 (Elliptical Orbit)
- エッジワース・カイパーベルト (Edgeworth-Kuiper Belt)
- オールトの雲 (Oort Cloud)
- 短周期彗星 (Short-period Comet)
- 長周期彗星 (Long-period Comet)
