火球 (Bolide)
火球とは、非常に明るい流星(流れ星)のことを指します。一般的な流れ星よりもはるかに明るく、その輝きは夜空で最も明るい惑星である金星(視等級-4等級程度)を超えるものを指すのが通例です。
宇宙空間に漂うチリや小石のような「流星物質」が地球の大気圏に突入すると、空気との猛烈な摩擦(正確には断熱圧縮)によって高温になり、発光します。これが流星です。火球は、その流星物質が比較的大きく(数ミリ~数センチ以上)、より激しく発光することで観測されます。
火球は非常に明るいため、時には昼間でも観測されることがあります(昼間火球)。また、飛行中に分裂したり、燃え尽きる瞬間にひときわ強く輝いたり(増光)、爆発的な閃光を放ったりすることもあります。
火球が燃え尽きずに地上まで落下した場合、その残骸を「隕石(いんせき)」と呼びます。
【もっと詳しく】
火球の定義は、厳密には分野によって異なる場合があります。
国際天文学連合(IAU)は、「絶対等級が-4等級よりも明るい流星」を火球(Bolide)と定義しています。これは、観測者から見た明るさではなく、天体が100kmの距離にあったと仮定した場合の明るさ(絶対等級)です。この明るさは、夜空で見える金星の最大光度に匹敵します。
一方、地質学や隕石学の分野では、明るさに関わらず、大気圏突入時に「空中爆発(Airburst)を起こした流星」を指して Bolide と呼ぶこともあります。
火球となる流星物質は、小石サイズから時には直径数メートルに達するものまで様々です。これらが秒速数十キロメートルという超高速で大気に突入すると、前面の空気が急激に圧縮されて数千度以上の高温プラズマとなり、まばゆい光を放ちます(この現象をアブレーションと呼びます)。
特に大きな流星物質が突入した場合、大気の圧力に耐えきれずに上空で分裂・爆発することがあります。これが空中爆発です。この爆発は強烈な衝撃波 (Shock wave) を発生させ、地上に「ドーン」というソニックブーム(衝撃音)を届かせることがあります。2013年にロシアに落下したチェリャビンスク隕石は、この火球(特に空中爆発を伴う「スーパーボライド」)が引き起こした現象として有名で、衝撃波により広範囲で窓ガラスが割れるなどの被害が出ました。
火球の光の色は、流星物質に含まれる元素や大気との反応によって異なり、例えばナトリウム(Na)が多いとオレンジ色に、鉄(Fe)が多いと黄緑色に見えることがあります。
■ 関連キーワードリスト
- 流星 (りゅうせい) (Meteor / Shooting star)
- 流星物質 (りゅうせいぶっしつ) (Meteoroid)
- 隕石 (いんせき) (Meteorite)
- 視等級 (しとうきゅう) (Apparent magnitude)
- 絶対等級 (ぜったいとうきゅう) (Absolute magnitude)
- 国際天文学連合 (こくさいてんもんがくれんごう) (International Astronomical Union / IAU)
- 空中爆発 (くうちゅうばくはつ) (Airburst)
- 衝撃波 (しょうげきは) (Shock wave)
- チェリャビンスク隕石 (チェリャビンスクいんせき) (Chelyabinsk meteor)
