概要
JAXA大樹航空宇宙実験場(Taiki Aerospace Research Field)は、北海道広尾郡大樹町の「大樹町多目的航空公園」内に位置する、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の実験施設です。
主に「大気球による宇宙科学実験」と「次世代航空機・無人航空機(UAV)の飛行実験」という2つの大きな柱を拠点として、最先端の宇宙航空研究を推進しています。

大気球(科学観測用気球)は、人工衛星や観測ロケットと並んで、科学観測や宇宙工学実験のための重要な飛翔体です。本施設では、成層圏に微生物が存在するかを調査する実験や、次世代太陽電池(ペロブスカイト太陽電池)の動作試験など、多岐にわたる研究が行われてきました。また航空技術の分野では、災害時に現場へ飛行し自動撮影等を行う「初動監視」を目的とした無人機の飛行試験や、ヘリコプターの騒音伝播特性試験なども実施されています。
基本データ
| 項目 | 詳細 |
| 施設名 | JAXA 大樹航空宇宙実験場 |
| 所在地 | 北海道広尾郡大樹町字美成169番地(大樹町多目的航空公園内) |
| 主な実験内容 | 大気球による理学観測・工学実験、航空機・小型無人機(UAV)の飛行実験 |
| 主要設備 | 飛行管制棟、気球格納庫、VHFレーダ、ドップラー風速計、低高度宇宙通信実験システム |
| 特徴 | ガス充填の屋内化(気球フィルム損傷を防ぐため、格納庫内でヘリウムガスを充填) |
主な施設と実験のプロセス
大気球の放球(打ち上げ)には、風の影響を極力避けるための工夫が施されています。
世界的には放球前の気球へのガス充填は屋外で行われることが多いですが、本施設では突風などによる気球フィルムの損傷を防ぐため、ガス充填を格納庫内(屋内)で実施できるシステムを採用しています。
- 屋内でのガス充填: 放球台車とスプール台車(気球頭部を保持する台車)を使用し、格納庫内で気球にヘリウムガスを充填します。
- 屋外への移動: ガス充填後、条件が整った時点で両台車を同期走行させ、荷姿全体を屋外へ移動させます。
- 放球: 跳ね上げローラーを解放して気球を立ち上げ、観測器を風下側に向けてから空へと放球します。
また、実験を安全に行うため、地上付近や上空の風速・風向を高い精度で測定するVHFレーダやドップラー風速計などの専用気象観測設備も完備されています。
歴史
日本の大気球実験は、かつて岩手県大船渡市にあった「三陸大気球観測所」で長年にわたり行われていました。しかし、より広大な飛翔空域と安全な実験環境を確保するため、2008年(平成20年)に三陸の観測所を閉鎖し、北海道の大樹町へと拠点を移管しました。
大樹町は独自の「宇宙のまちづくり」を標榜しており、JAXAの実験場移管によってその取り組みは大きく前進しました。2009年には、100日間以上の超長時間飛翔を可能にする次世代気球「圧力気球」を与圧状態で水平飛翔させる日本初の実験に成功するなど、現在の拠点でも数々の確かな実績を積み重ねています。
地図(Map)
JAXA大樹航空宇宙実験場周辺の航空写真です。滑走路や、広大な実験エリアを確認することができます。
関連リンク
施設の詳細や最新の実験計画、大樹町の取り組みについては以下のウェブサイトをご参照ください。
