天の赤道(Celestial Equator)
英語: Celestial Equator
天の赤道(てんのせきどう)とは、地球の赤道をそのまま宇宙空間に(天球上まで)延長した、空に描かれる想像上の大円(円周)のことです。 🌎
もし地球が透明で、赤道部分だけが赤く光る線だとしたら、宇宙からその光の輪が見えます。その輪を、はるか遠くの星々が貼り付いている「天球」という空のスクリーンに映し出したものが「天の赤道」です。
天の赤道は、星の位置を測定するための非常に重要な基準線(スタートライン)となります。
地球上で場所を「緯度(いど)」で表すように、天体(星や銀河)の位置は「赤緯(せきい)」という値で表します。天の赤道は、この赤緯が0度 (0^\circ) と定義される基準線です。
天の赤道より北側(天の北極側)にある天体は赤緯がプラス(+)で表され、南側(天の南極側)にある天体はマイナス(-)で表されます。
【もっと詳しく】
天の赤道は、天文学で最も一般的に使用される座標系の一つである赤道座標系(Equatorial coordinate system)の基準面です。この座標系は、地球の自転軸と赤道面を基準にしています。
- 赤緯 (Declination, Dec):前述の通り、天の赤道からの天球上の角度距離を示します。天の赤道を 0^\circ とし、天の北極を +90^\circ、天の南極を -90^\circ とします。これは地球の緯度(Latitude)に相当します。
- 赤経 (Right Ascension, RA):天の赤道に沿って測定されるもう一つの座標です。地球の経度(Longitude)に相当します。基準点(0時)となるのは、天の赤道と「黄道(こうどう)」が交差する点のうち、太陽が南から北へ通過する点である「春分点」です。そこから東回りに、時間(時・分・秒)または角度(度)で測定されます(24時 = 360^\circ)。
黄道との関係
天の赤道は、太陽の見かけ上の通り道である黄道(Ecliptic)とは一致しません。
地球は自転軸(地軸)を約 23.4^\circ 傾けたまま公転しているため、天の赤道面と黄道面も同じ角度(地軸の傾きに等しい約 23.4^\circ)で交差しています。
この2つの大円(天の赤道と黄道)が交わる点が、前述の「春分点」と「秋分点」です。太陽が天の赤道を南から北へ横切るのが春分点、北から南へ横切るのが秋分点です。
歳差運動の影響
地球の自転軸は、コマの首振り運動のように、約2万5800年周期でゆっくりと向きを変える「歳差運動(Precession)」を起こしています。地軸の向きが変わるということは、その基準面である天の赤道の位置も、天球上でゆっくりと移動していくことを意味します。
これにより、春分点の位置も黄道上をゆっくりと西向きに移動します。そのため、星々の赤経・赤緯は時間と共にわずかに変化します。天体の正確な位置を示す際は、「J2000.0(2000年1月1日時点での座標)」のように、どの時代の天の赤道と春分点を基準にしたか(元期:Epoch)を明記する必要があります。
■ 用語リスト
- 天球 (Celestial Sphere)
- 赤道 (Equator)
- 赤緯 (Declination)
- 赤経 (Right Ascension)
- 赤道座標系 (Equatorial coordinate system)
- 黄道 (Ecliptic)
- 春分点 (Vernal equinox)
- 地軸の傾き (Axial tilt)
- 歳差運動 (Precession)
