スペースXによる第34回商業補給ミッション(CRS-34)の打ち上げ
NASAの発表によると、次期国際宇宙ステーション(ISS)補給ミッションであるスペースX「CRS-34(Commercial Resupply Services 34)」は、米国東部夏時間(EDT)5月12日午後7時16分にフロリダ州のケープカナベラル宇宙軍基地第40発射施設から打ち上げを予定していましたが、5月15日に延期されることになりました。米国東部夏時間(EDT)で午後5時45分に打ち上げを予定しています。(日本時間は16日午前6時45分)
ファルコン9ロケットに搭載された無人補給船「ドラゴン」には、約6,500ポンド(約2.9トン)にも及ぶ科学実験装置、乗組員の補給品、および実験用ハードウェアが積載されています。ISSとの自動ドッキングはNASAのジャック・ハサウェイ飛行士とESA(欧州宇宙機関)のソフィー・アデノ飛行士がそのプロセスを監視します。
【SPACEDOOR 専門解説】 CRS(商業補給サービス)プログラムにおいて、生体サンプルなどの温度管理が極めて重要なペイロード(Time-sensitive research samples)を輸送する際、ドラゴンのような帰還・即時取り出し能力を持つ宇宙船は不可欠です。ドッキングからわずか2時間半後にはジェシカ・メイア飛行士らが加わり、ポータブル冷凍庫から迅速にサンプルを取り出す手順が組まれています。
微小重力環境での物理学・量子研究の最前線
ドラゴンの到着を待つ間にも、ISS内では高度な科学実験が絶え間なく行われています。NASAのジェシカ・メイア飛行士は、米国実験棟「デスティニー」の微小重力科学グローブボックス(MSG)を使用し、コロイド物理学の調査を開始しました。

さらに特筆すべきは、量子物理学の研究施設である「コールドアトムラボ(Cold Atom Lab: CAL)」の新しい科学モジュールの設置が完了したことです(このモジュールは4月13日にノースロップ・グラマン社のシグナスXL補給船で届けられました)。
【SPACEDOOR 専門解説】
- コロイド物理学: ゲル状の物質内に浮かぶ微粒子(コロイド)が重力のない状態でどのように振る舞うかを研究します。地球上では重力による沈殿が起きますが、微小重力下では純粋な粒子の相互作用を観察でき、次世代の材料開発や、食品・化粧品の品質向上に直結します。
- コールドアトムラボ(CAL): ガス状の原子を絶対零度近くまで冷却し、「ボース・アインシュタイン凝縮」と呼ばれる特異な量子状態を作り出す画期的な装置です。微小重力下ではこの超低温状態を地球上よりはるかに長く維持できるため、量子力学の根源的な謎に迫ることが期待されています。
宇宙農業と生命維持システムの進化
長期的な深宇宙探査に向けて、「食料の自給」と「資源の完全リサイクル」は最大の課題です。
ESAのソフィー・アデノ飛行士は、宇宙農業研究「Veg-06」の一環として、栽培中のアルファルファ(日本ではムラサキウマゴヤシという牧草)に水を与え、生育状況の記録を行いました。一方、NASAのジャック・ハサウェイ飛行士は、「トランクウィリティー」モジュール内で水再生システムのアップグレード(高度な軌道上配管作業)を実施しました。

【SPACEDOOR 専門解説】
- Veg-06と宇宙農業: アルファルファは栄養価が高く、成長プロセスを研究するのに適した植物です。植物工場(Veggie)での知見は、将来の月面基地や火星ミッションでの乗組員の栄養確保と心理的ケアに役立ちます。
- 環境制御・生命維持システム(ECLSS): 尿や汗を飲料水レベルまで浄化する水再生システムの効率化は、地球からの物資補給を劇的に減らすために不可欠です。最新の配管・モジュール更新は、将来の深宇宙探査船の設計に直接反映されます。
ロボティクス実証とISSの維持管理
NASAのクリス・ウィリアムズ飛行士は、日本の実験棟「きぼう」内で、精密な自動操作能力を持つ小型ロボットアームの技術実証テストを行いました。
同時に、ロスコスモス(ロシア宇宙機関)のクルーたちもステーションの維持に奔走しています。セルゲイ・クド=スベルチコフ飛行士とセルゲイ・ミカエフ飛行士は、プログレス補給船(94号機および95号機)からの物資と水の移送作業を進め、次回の船外活動(EVA)に向けた「ポイスク」エアロックの準備を整えました。アンドレイ・フェジャエフ飛行士は、「ズヴェズダ」サービスモジュールにおける除湿機の部品交換など、重要な環境システムのメンテナンスを実施しました。
【SPACEDOOR 専門解説】 「きぼう」実験棟のエアロックや微細なロボティクス技術は、船外での実験や小型衛星の放出において世界トップクラスの能力を持っています。小型ロボットアームの自律化・精密化は、将来的に宇宙飛行士のリスクを伴う船外活動(EVA)を代替するポテンシャルを秘めています。
