施設概要
クェゼリン環礁(Kwajalein Atoll)は、太平洋中部に浮かぶ世界最大級の環礁です。第二次世界大戦前までは日本の統治下にあったが、1944年にアメリカ軍が侵攻し、アメリカ軍が占領しました。その後は軍事目的で使われる場所となりました。ここにはアメリカ軍の「ロナルド・レーガン弾道ミサイル防衛試験場(RTS)」が設置されており、広大な海域と高度なレーダー群を活用して、ミサイル迎撃試験や宇宙空間の監視が行われています。
宇宙開発の観点において、この場所の最大の強みは赤道に近いこと(北緯約8度)です。赤道付近から東向きにロケットを打ち上げると、地球の自転による遠心力(時速約1,600kmの「おまけの加速」)を最大限に利用できるため、燃料を節約し、より重いペイロード(人工衛星など)を軌道に投入することが可能になります。
この地理的優位性を活かし、主に以下の2つの画期的な宇宙開発プロジェクトの拠点として利用されてきました。
- 空中発射軌道投入(Air launch to orbit)オービタル・サイエンシズ社(現在のノースロップ・グラマン)が開発した「ペガサス(Pegasus)」ロケットの打ち上げ拠点として利用されました。母機となる改造旅客機「スターゲイザー(L-1011)」にロケットを吊り下げて離陸し、上空約12,000メートルで切り離して空中でエンジンに点火・軌道へ投入する手法です。クェゼリン環礁の滑走路から飛び立ち、IBEXやNuSTARなどのNASAの重要な科学衛星を宇宙へ送り届けました。
- 民間初の液体燃料ロケット打ち上げ(地上発射)環礁内にある小さな島「オメレク島(Omelek Island)」は、創業間もないSpaceX社が初期の拠点として使用していました。2008年、ここから打ち上げられた「ファルコン1(Falcon 1)」ロケットのフライト4が軌道投入に成功し、民間企業が独自開発した液体燃料ロケットとして史上初の快挙を成し遂げました。
基本データ
| 項目 | 詳細 |
| 名称 | クェゼリン環礁 / ロナルド・レーガン弾道ミサイル防衛試験場 |
| 所在地 | マーシャル諸島共和国 |
| 運用者 | アメリカ国防総省(主に陸軍)、NASA、民間企業 |
| 地理座標 | 北緯8度43分、東経167度44分 |
| 主な用途 | 弾道ミサイル防衛テスト、宇宙空間監視、ロケットの打ち上げ |
| 打ち上げ方式 | 空中発射(ペガサスロケット)、地上発射(ファルコン1等) |
地図(航空写真)
宇宙開発における歴史
- RTSの設立とレーダー施設の拡充
- 1960年代〜
- アメリカ軍がミサイル防衛システム(Nike-Zeusなど)のテスト拠点として環礁の利用を開始。その後、宇宙空間を監視する高性能レーダーネットワークが構築され、人工衛星の追跡にも貢献するようになる。
- HETE-2衛星の打ち上げ
- 2000年10月
- ペガサスロケットを利用し、NASAのガンマ線バースト観測衛星「HETE-2」がクェゼリン環礁上空から打ち上げられる。空中発射拠点としての地位を確立。
- SpaceXによるオメレク島の利用開始
- 2006年
- SpaceX社が赤道に近いオメレク島をファルコン1ロケットの射場として整備し、初の打ち上げ試験(フライト1)を実施。
- ファルコン1、民間初の軌道投入成功
- 2008年9月
- 3度の失敗を乗り越え、オメレク島から打ち上げられたファルコン1(フライト4)が軌道投入に成功。民間宇宙開発の歴史を塗り替える転換点となる。
- NuSTAR衛星の打ち上げ
- 2012年6月
- NASAのX線宇宙望遠鏡「NuSTAR」が、母機スターゲイザーから切り離されたペガサスXLロケットによってクェゼリン環礁の南の空域から打ち上げられ、赤道上空の軌道へ投入される。
