ジュノー探査機(Juno)
Juno(ジュノー)は、アメリカ航空宇宙局(NASA)が運用する木星探査機です。2011年8月に打ち上げられ、約5年間の旅を経て2016年7月に木星の周回軌道に到着しました。
この探査機の主な目的は、木星の起源と進化の謎を解き明かすことです。ガスでできた巨大な惑星である木星は、太陽系がどのようにして形成されたのかを知るための重要な手がかりを握っていると考えられています。
Junoは、木星の内部構造(特に中心にある「核」が固体なのか、あるいは曖昧なものなのか)、強力な磁場がどのように生まれているのか、大気中に水やアンモニアがどれくらい含まれているのか、そして極域で輝く壮大なオーロラの発生メカニズムなどを詳しく調査しています。
その最大の特徴は、木星の北極と南極の上空を通過する「極軌道」と呼ばれる特殊な軌道をとっていることです。これにより、これまで他の探査機が見ることができなかった木星の極域の様子や、木星全体を詳細に観測することが可能になりました。
また、太陽から遠く離れた木星軌道では、電力を確保するために原子力電池が使われるのが一般的でしたが、Junoは技術の進歩により、巨大な3枚の太陽電池パネルだけで必要な電力をまかなっている点も画期的です。
【もっと詳しく】
Junoは、NASAの中規模探査計画である「ニュー・フロンティア計画」の2番目のミッションとして選定されました(1番目は冥王星探査機ニュー・ホライズンズ)。ミッション名は、ローマ神話の主神ジュピター(木星)の妻であり、夫が雲で隠した秘密を見通すことができた女神「ユノ(Juno)」に由来します。
Junoは、木星の分厚い雲の下に隠された「素顔」を暴くため、以下のような高性能な観測機器を搭載しています。
- マイクロ波放射計 (MWR): 木星の雲の奥深く、大気圧が地球の数百倍にもなる深層の様子を探り、水やアンモニアの量を測定します。
- 磁力計 (MAG): 木星の強力かつ複雑な磁場の詳細な3次元マップを作成します。
- 重力測定装置 (Gravity Science): 探査機の軌道のわずかな揺らぎを精密に測定することで、木星内部の質量分布を割り出し、核の状態を推定します。
- JIRAM (赤外線オーロラマッパー): オーロラが発生する領域や、大気上層のメタンや水蒸気の分布を観測します。
Junoは、木星の放射線帯(ヴァン・アレン帯)の影響を避けるため、細長い楕円軌道を周回しています。木星に最も近づく「ペリジョーブ(近木点)」では、雲の頂上からわずか数千kmの距離まで接近し、高速でデータを取得します。
Junoのこれまでの発見は、従来の木星像を覆すものでした。例えば、木星の核は、これまで考えられていたような小さく明確なものではなく、中心部から広範囲に重い元素が溶け込んでいる**「希薄な核(Dilute Core)」である可能性が示唆されています。また、両極には巨大なサイクロン**(渦)が複数、幾何学的な模様を描くように配置されていることも初めて発見されました。
当初のミッションは2021年に終了する予定でしたが、その科学的成果が高く評価され、ミッションは延長されています。現在は、木星の衛星であるガリレオ衛星(特にイオ、エウロパ、ガニメデ)へのフライバイ(接近通過)観測も行い、木星系全体の理解を深めています。
