褐色矮星 (Brown Dwarf)
褐色矮星(かっしょくわいせい)は、「恒星になり損ねた天体」とも呼ばれる、宇宙に存在する天体の一種です。
その特徴は、惑星(例えば木星)よりも重いのですが、恒星(例えば太陽)になるには質量が足りないという、惑星と恒星の中間に位置する点にあります。
恒星は、その中心部で膨大な重力によって高温・高圧になり、「水素の核融合(かくゆうごう)」という反応を起こして、自ら光と熱を放ち続けます。これが、太陽が輝いている理由です。
しかし、褐色矮星はこの水素の核融合を持続的に起こすほどの質量(重さ)を持っていません。そのため、恒星のように明るく輝き続けることができず、生まれてから時間が経つにつれて冷えて暗くなっていきます。
ただし、惑星よりは重いため、誕生して間もない頃は、水素よりも反応しやすい「重水素(じゅうすいそ)」という特殊な水素の核融合を一時的に起こすことがあります。また、天体自身が重力によって収縮する際に発生する熱(重力収縮エネルギー)によって、赤外線を中心とした暗い光を放ちます。
「褐色」という名前がついていますが、実際の色は褐色(茶色)ではなく、温度に応じて暗い赤色やまぶしい赤紫色(マゼンタ色)に見えると考えられています。
【もっと詳しく】
褐色矮星の定義は、その質量によって厳密になされています。
一般的に、木星質量の約13倍から80倍(太陽質量の約0.013倍から0.08倍)の質量を持つ天体が褐色矮星に分類されます。
- 下限(木星質量の約13倍, M_J<strong>): これが、中心部で重水素核融合(Deuterium fusion)を起こせるかどうかの境界です。これより軽い天体は、巨大ガス惑星(または浮遊惑星)に分類されます。
- 上限(木星質量の約80倍, </strong>M_J<strong>): これが、中心部で水素核融合(Hydrogen fusion)を持続的に起こせるかどうかの境界です。これより重い天体は、恒星(最も暗い「赤色矮星」)に分類されます。
褐色矮星は、恒星のように自ら輝き続けることができないため、時間とともに冷却していきます。その内部は、恒星とは異なり、主に電子縮退圧(でんししゅくたいあつ)という特殊な圧力によって自身の重力を支えています。これは、恒星が燃え尽きた後の「白色矮星」と同じ状態です。
恒星がOBAFGKMというスペクトル型で分類されるのに対し、褐色矮星は恒星よりもさらに温度が低いため、L型、T型、Y型という独自のスペクトル型で分類されます。
- L型: 表面温度が約1,300K~2,400K。大気中にはケイ酸塩や鉄の粒子(雲)が存在します。
- T型: 表面温度が約500K~1,300K。L型よりも冷たく、大気中ではメタン($CH_4$)が顕著に見られます。
- Y型: 表面温度が約500K以下。非常に冷たく暗い天体で、水の氷の雲が存在する可能性も指摘されています。
関連用語リスト
- 赤色矮星 (Red Dwarf)
- 恒星 (Star)
- 惑星 (Planet)
- 核融合 (Nuclear Fusion)
- 質量 (Mass)
- 重水素 (Deuterium)
- 赤外線 (Infrared)
- スペクトル型 (Spectral Type)
- 電子縮退圧 (Electron Degeneracy Pressure)
