Image Credit : NASA
連星 (れんせい)
英語: Binary Star
連星とは、2つの恒星(太陽のように自ら光る星)が、お互いに及ぼし合う重力によって結びつき、共通の重心(共通重心)のまわりを公転している天体のことを指します。
夜空に輝く星々は、肉眼や性能の低い望遠鏡では1つの点にしか見えなくても、高性能な望遠鏡で詳しく観測すると、実は2つ(あるいはそれ以上)の星が非常に近い距離で回り合っていることがよくあります。
私たちの太陽系は、太陽という1つの恒星(単独星)が中心にありますが、宇宙全体で見ると、太陽のように単独で存在する星よりも、連星や、3つ以上の星が集まる「多重星系」の方がむしろ一般的であると考えられています。
連星は、2つの星の間の距離や、地球から見たときの軌道の傾きなどによって、様々なタイプに分類されます。
【もっと詳しく】
連星系の研究は、天文学において極めて重要です。なぜなら、恒星の最も基本的な物理量である「質量」を、ケプラーの法則を使って直接測定できる、ほぼ唯一の信頼できる方法だからです。恒星の質量がわかれば、その星がどれくらいの明るさで、どれくらいの期間輝き、最終的にどのような一生を終えるのか(進化)を詳細に予測できます。
連星は、主に以下の4つの観測方法によって分類されます。
- 実視連星 (Visual Binary) 望遠鏡を使って観測したときに、2つの星がはっきりと分離して見え、それらが共通重心のまわりを公転している様子を長期間にわたって観測できるものです。
- 分光連星 (Spectroscopic Binary) 2つの星が近すぎるか、または地球から遠すぎるために望遠鏡でも分離して見えない連星です。しかし、恒星の光をスペクトル(虹のように波長ごとに分けたもの)として観測すると、星が地球に近づいたり遠ざかったりする動き(公転)によって、ドップラー効果が生じます。これにより、スペクトル中の吸収線が周期的にずれる(青方偏移や赤方偏移)ことで、連星であることがわかります。
- 食連星 (Eclipsing Binary) 2つの星の公転軌道面が、地球から見てちょうど横倒しになっている連星です。そのため、一方の星がもう一方の星の前を通過する「食」が周期的に発生します。食が起こると、2つの星の光が重なって見えている地球からの「見かけの明るさ」が一時的に暗くなるため、その周期的な光度変化を観測することで連星だとわかります。有名な例として「アルゴル(悪魔の星)」があります。
- 位置天文的連星 (Astrometric Binary) 一方の星が明るく、もう一方の星(伴星)が非常に暗い(あるいはブラックホールや中性子星のように見えない)場合です。明るい方の星の動きを精密に観測すると、見えない伴星の重力に引かれて、軌道がふらついている(蛇行している)ように見えることから、伴星の存在がわかります。
特に、2つの星の距離が非常に近い「近接連星」では、一方の星が進化の最終段階で膨張(赤色巨星化など)した際、その表面のガスが重力によってもう一方の星へと流れ込む「質量移動」が発生することがあります。
この質量移動は、両方の星の進化の運命を劇的に変えます。例えば、流れ込んだガスが白色矮星(恒星の”燃えカス”)の表面で爆発的に核融合を起こす「新星」現象や、白色矮星がガスの重みで限界質量(チャンドラセカール限界)を超えて大爆発を起こす「Ia型超新星」などは、この近接連星系でしか起こらないと考えられています。
関連する宇宙用語
- 恒星 (Star)
- 重力 (Gravity)
- 共通重心 (Center of Mass / Barycenter)
- 公転 (Orbit)
- 多重星系 (Multiple Star System)
- 質量 (Mass)
- スペクトル (Spectrum)
- ドップラー効果 (Doppler Effect)
- 食 (Eclipse)
- 近接連星 (Close Binary)
- 質量移動 (Mass Transfer)
- 白色矮星 (White Dwarf)
- 新星 (Nova)
- Ia型超新星 (Type Ia Supernova)
