フレア (Flare)
フレア(Flare)とは、主に太陽の表面(彩層やコロナ)で発生する、大規模な爆発現象のことです。
この現象は、太陽の活動領域、特に黒点の周辺に蓄えられた磁気エネルギーが、何らかのきっかけで急速に解放されることによって発生します。
フレアが発生すると、短時間(数分から数時間)のうちに、X線やガンマ線、紫外線といった強力な電磁波や、高エネルギーの粒子(プラズマ)が宇宙空間に放出されます。この爆発のエネルギーは、水素爆弾数千万~数億個分に相当するとも言われています。
放出されたX線や高エネルギー粒子が地球に到達すると、地球の磁場や大気に影響を与え、「宇宙天気」の変動を引き起こします。具体的には、美しいオーロラが通常より低い緯度(例えば北海道など)で見られるようになる一方で、短波通信の障害(デリンジャー現象)、GPSの測位誤差の増大、人工衛星の故障、大規模な停電(送電網の障害)などを引き起こす可能性があり、私たちの生活に大きな影響をおよぼすことがあります。
【もっと詳しく】
フレアの発生メカニズムは、太陽大気中のプラズマが持つ磁場のエネルギーが関わっています。太陽の活動領域では、磁力線のねじれや複雑な絡み合いによって大量の磁気エネルギーが蓄積されます。このねじれた磁力線が、磁気リコネクション(磁気再結合)と呼ばれるプロセスによってつなぎ変わり、より単純な構造になる際に、蓄えられていたエネルギーが一気に解放されます。
このエネルギー解放によって、プラズマが数千万度にまで加熱され、強力なX線やガンマ線、紫外線などの電磁波が放射されます。同時に、電子や陽子などの荷電粒子が光速に近い速度にまで加速され(太陽プロトン現象:SPE)、宇宙空間に放出されます。
フレアの規模は、放出されるX線の強度(ピークフラックス)によって分類され、小さい方からA、B、C、M、Xの各クラスに分けられます。Xクラスが最も強力なフレアであり、Mクラスの10倍、Cクラスの100倍のエネルギー規模を持ちます。Xクラスのフレアが発生すると、地球に深刻な影響が出る可能性があります。
また、大規模なフレアは、しばしばコロナ質量放出(Coronal Mass Ejection, CME)と呼ばれる、太陽コロナのプラズマ(ガスの塊)が大規模に放出される現象を伴います。CMEが地球に到達すると、地球の磁場を大きく乱し、磁気嵐と呼ばれる現象を引き起こします。フレアによるX線は発生から約8分で地球に到達しますが、CMEのプラズマが地球に到達するには1~数日かかります。
太陽以外の恒星でも同様の爆発現象が観測されており、これらは「恒星フレア」と呼ばれます。中には、太陽の最大級のフレアの数千倍から数万倍ものエネルギーを持つ「スーパーフレア」を発生させる星も存在することが知られています。
