SLS(スペース・ローンチ・システム)
英語: Space Launch System
SLS(エスエルエス)は、NASA(アメリカ航空宇宙局)が開発した、現役で世界最強の超大型ロケットです。「スペース・ローンチ・システム」の頭文字をとってSLSと呼ばれています。

このロケットの主な目的は、アポロ計画以来の有人月探査計画である「アルテミス計画」において、宇宙飛行士が搭乗する新型宇宙船「オリオン(ORION:オライオンとも呼ぶ)」や、将来の月面基地の建設資材、探査ローバーなどを、地球の周回軌道を超え、一気に月やさらに遠い火星へと送り込むことです。
SLSの最大の特徴は、かつて活躍したスペースシャトルの技術やコンポーネント(部品)を多く流用している点です。オレンジ色の巨大な中央タンク(コアステージ)はスペースシャトルの外部燃料タンクをベースに設計されており、そこに取り付けられる4基のメインエンジン「RS-25」も、スペースシャトルで実際に使用され、回収・整備されたものが使われています。
さらに、両脇には「固体ロケットブースター(SRB)」と呼ばれる、スペースシャトルで使われたものより一段階大型化された強力な補助ロケットを2本装備しています。
これらの実績ある技術を活用することで、開発期間の短縮とコストの削減を図りつつ、アポロ計画で活躍した史上最大のロケット「サターンV」に匹敵する、あるいはそれを超えるほどの強大な打ち上げ能力を実現しています。
【もっと詳しく】
SLSは、打ち上げ能力やミッションの要求に応じて段階的にアップグレードされる「ブロック(Block)」と呼ばれる構成が計画されています。
- ブロック1 (Block 1): アルテミス計画の初期ミッション(I、II、III)で使用される構成です。コアステージとSRBは共通ですが、第2段(アッパーステージ)には「ICPS(暫定極低温推進ステージ)」という、既存のロケット(デルタIV)の上段を改良したものが使用されます。この構成でも、月軌道へ27トン以上のペイロード(荷物)を投入する能力を持ちます。
- ブロック1B (Block 1B): アルテミスIV以降で計画されている構成です。最大の特徴は、第2段が「EUS(探査アッパーステージ)」という、より大型で強力な新型ステージに換装される点です。EUSは4基のRL10エンジンを備え、オライオン宇宙船と大型の貨物(月面基地のモジュールなど)を同時に月へ運ぶことが可能となり、月への輸送能力が38トン以上に向上します。
- ブロック2 (Block 2): 将来的な火星探査なども視野に入れた最終構成案です。第2段はEUSを使用し、さらにSRBが新型の高性能ブースターに交換されます。これにより、月への輸送能力は46トン以上に達するとされています。
SLSは、2010年に計画が中止された「コンステレーション計画」で開発されていた「アレスV」ロケットの設計思想と、スペースシャトル計画(SSP)の技術的遺産(ハードウェア)を統合する形で誕生しました。特にRS-25エンジン(別名:SSME / スペースシャトル・メインエンジン)は、液体水素と液体酸素を推進剤とする高性能エンジンの傑作とされ、その再利用がSLSの強力な推進力の核となっています。
■ 関連キーワード
- NASA(アメリカ航空宇宙局) (National Aeronautics and Space Administration)
- アルテミス計画 (Artemis Program)
- オライオン宇宙船 (Orion Spacecraft)
- 月 (Moon)
- 火星 (Mars)
- スペースシャトル (Space Shuttle)
- RS-25エンジン (RS-25 Engine / SSME)
- 固体ロケットブースター (Solid Rocket Booster / SRB)
- コアステージ (Core Stage)
- サターンV (Saturn V)
- ICPS (Interim Cryogenic Propulsion Stage)
- EUS (Exploration Upper Stage)
- コンステレーション計画 (Constellation Program)
