天球 (Celestial Sphere)
天球(てんきゅう)とは、地球(あるいは観測者)を中心として、すべての天体(恒星、惑星、太陽、月など)がその内側に貼り付いているように見える、とてつもなく大きな仮想の球体のことです。
私たちは地球から宇宙を見上げると、星々がどれも自分から同じ距離にあるように感じられます。実際には星までの距離はまちまちですが、その遠近感を無視して、すべての天体を一つの球の表面に配置されていると考えると、天体の位置や動きを理解しやすくなります。この便利な「道具」が天球です。
地球が自転しているため、天球は(見かけ上)天の北極と天の南極を結ぶ軸の周りを約1日(約23時間56分)で回転しているように見えます。これにより、星々は東から昇り、西へ沈む日周運動を行います。
天球上での天体の位置は、私たちが地球上で緯度と経度を使って場所を表すのと同じように、「座標」を使って正確に示すことができます。
【もっと詳しく】
天球は、天文学において天体の位置や運動を記述するために用いられる、観測者を中心とした半径無限大(または任意の巨大な半径)の仮想的な球面です。地球の自転や公転、さらには恒星の固有運動などを考慮する際、基準となる座標系を定義するために不可欠な概念です。
天球上の座標系にはいくつか種類がありますが、最も一般的に使われるのが赤道座標系です。これは、地球の赤道を天球まで延長した天の赤道と、地球の北極・南極を延長した天の北極・天の南極を基準にします。天の赤道からの角度を赤緯(せきい)(地球の緯度に相当)、天の赤道に沿った基準点(春分点)からの角度を赤経(せきけい)(地球の経度に相当)と呼び、この2つで天体の位置を(地球の歳差運動による変動を除けば)ほぼ固定的に表すことができます。
他にも、観測者の地平線を基準とする地平座標系(高度と方位角で表す)や、太陽の通り道である黄道(こうどう)を基準とする黄道座標系などがあり、目的に応じて使い分けられます。
天球の概念は古代ギリシャ時代から存在し、プトレマイオスの天動説(地球中心説)では、天体は実際に「天球」と呼ばれる透明な球殻に固定されて地球の周りを回っていると考えられていました。現代天文学では、天球は実在するものではなく、あくまで天体の見かけの位置を示すための数学的な「球面」として扱われています。
関連用語リスト
- 天の北極 (Celestial North Pole)
- 天の南極 (Celestial South Pole)
- 日周運動 (Diurnal motion)
- 座標 (Coordinate)
- 赤道座標系 (Equatorial coordinate system)
- 天の赤道 (Celestial equator)
- 赤緯 (Declination)
- 赤経 (Right ascension)
- 春分点 (Vernal equinox / March equinox)
- 地平座標系 (Horizontal coordinate system)
- 黄道 (Ecliptic)
- 黄道座標系 (Ecliptic coordinate system)
