スペース・ローンチ・コンプレックス41
フロリダ州ケープカナベラル宇宙軍基地の北端に位置するスペース・ローンチ・コンプレックス41(SLC-41)は、アメリカの宇宙開発において極めて重要な役割を担う現役の発射施設です。タイタンロケットによる歴史的なミッションから、現在のアトラスV、そして次世代のヴァルカン・ケンタウルスロケットまで、数多くの探査機や人工衛星、そして有人宇宙船を宇宙へと送り出してきました。
施設の概要
SLC-41は、現在ユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)によって運用されており、同社の主力ロケットであるアトラスVと、後継機であるヴァルカン・ケンタウルスの打ち上げ拠点となっています。その地理的な位置(北緯28.583度、西経80.583度)は、地球の自転を最大限に活用して東向きに打ち上げるミッションに最適です。
この発射施設は、「クリーンパッド」コンセプトを採用しており、発射台自体には必要最低限の設備しかありません。ロケットの組み立てや整備は、射点から少し離れた垂直統合施設(Vertical Integration Facility – VIF)で行われます。VIF内で移動式発射プラットフォーム(Mobile Launch Platform – MLP)の上に垂直に組み立てられたロケットは、打ち上げの約1日前に、 спеціаな鉄道線路を使って射点まで運ばれます。この方式により、効率的かつ安全な打ち上げ準備が可能となっています。
輝かしい歴史:タイタンの時代
SLC-41の歴史は1964年に始まり、当初はアメリカ空軍のタイタンIIIおよびタイタンIVロケットの打ち上げのために建設されました。1965年12月21日のタイタンIIICの初打ち上げを皮切りに、数々の重要なミッションを成功に導きました。
特筆すべきは、太陽系の謎に挑んだNASAの惑星探査ミッションです。
- バイキング計画(1975年):史上初めて火星表面に着陸し、生命の痕跡を探査した2機の探査機を打ち上げました。
- ボイジャー計画(1977年):木星、土星、天王星、海王星を探査し、現在も太陽系外の星間空間を航行し続けている2機の探査機は、この場所から旅立ちました。
これらのミッションは、人類の宇宙に対する理解を飛躍的に深めるものであり、SLC-41がその歴史的な出発点となりました。タイタンロケットによる最後の打ち上げは1999年4月9日に行われ、その後、施設は次世代ロケットのために大規模な改修期間に入りました。
データと統計
項目 | 詳細 |
場所 | アメリカ合衆国 フロリダ州 ケープカナベラル宇宙軍基地 |
座標 | 北緯28.583度 西経80.583度 |
運用者 | ユナイテッド・ローンチ・アライアンス (ULA) |
主要ロケット | 現在: アトラスV, ヴァルカン・ケンタウルス 過去: タイタンIII, タイタンIV |
最初の打ち上げ | 1965年12月21日 (タイタンIIIC) |
アトラスV初打ち上げ | 2002年8月21日 |
ヴァルカン初打ち上げ | 2024年1月8日 |
特記事項 | ボイジャー計画、バイキング計画、ニュー・ホライズンズ、キュリオシティ、スターライナー有人飛行など、歴史的なミッションの打ち上げ地点。 |
MAP
現在と未来:アトラスV、ヴァルカン、そして有人宇宙飛行
2002年8月21日、SLC-41はアトラスVロケットの初打ち上げで新たな時代の幕を開けました。以来、アトラスVはこの射点から、火星探査機「マーズ・サイエンス・ラボラトリー(キュリオシティ)」や「マーズ・リコネッサンス・オービター」、冥王星探査機「ニュー・ホライズンズ」、木星探査機「ジュノー」など、数多くの重要な科学ミッションを打ち上げてきました。
そして現在、SLC-41はさらなる進化を遂げています。ULAの新型ロケット「ヴァルカン・ケンタウルス」が2024年1月にこの地からデビューを飾り、アメリカの宇宙輸送能力を新たなレベルへと引き上げています。
さらに、SLC-41は民間有人宇宙飛行の拠点という新たな顔も持ち合わせています。ボーイング社の新型有人宇宙船「CST-100 スターライナー」は、アトラスVロケットによってこの射点から国際宇宙ステーション(ISS)へと打ち上げられます。そのためのクルーアクセスアームを備えた新たなタワーも建設され、アメリカの有人宇宙飛行能力の強化に貢献しています。
関連リンク
- ロケットの打ち上げ予定カレンダー
- Space Launch Complex 40 (Cape Canaveral SFS)
- Launch Complex 39A (Kennedy Space Center, FL, USA)
- Cape Canaveral SFS(ケープカナベラル宇宙軍施設)