スペースX スターベース軌道発射台1号(テキサス州)
概要
スペースX社のスターベース施設にある軌道発射台1号は、テキサス州の南端、メキシコ湾岸のボカチカに位置する、世界で最も先進的な宇宙船発射施設の一つです。この発射台は、イーロン・マスク氏が率いるスペースX社が開発した、次世代の再利用可能な宇宙船「スターシップ」と、その巨大なブースター「スーパーヘビー」の打ち上げ、着陸、そして回収のために特別に設計されました。地球周回軌道へのペイロード輸送はもちろん、月や火星への有人飛行をも見据えた、人類の宇宙進出における重要な拠点です。
発射台は、その巨大な発射・回収タワーが特徴的で、「メカジラ(Mecazilla tower)」という愛称でも知られています。このタワーには「チョップスティック」と呼ばれる巨大なアームが備え付けられており、スターシップとスーパーヘビーを正確に発射台に設置(スタッキング)するだけでなく、打ち上げ後に垂直帰還するブースターを空中で捕獲(キャッチ)するという、これまでのロケット発射の常識を覆す革新的な運用が計画されています。
基本データ
項目 | 詳細 |
名称 | 軌道発射台1号 (Orbital Launch Pad 1) |
別名 | OLM (Orbital Launch Mount) A, Launch Pad A, メカジラ |
場所 | アメリカ合衆国 テキサス州 キャメロン郡 スターベース |
所属 | スペースX (SpaceX) |
用途 | スターシップおよびスーパーヘビーの打ち上げ・着陸・回収 |
主な設備 | 発射・回収タワー(インテグレーションタワー)、チョップスティックアーム、発射台、水冷式フレームディフレクター、推進剤貯蔵タンクファーム |
初打ち上げ | 2023年4月20日(スターシップ統合飛行試験1) |
地図
歴史
スターベースの開発は2010年代後半に本格化し、当初はファルコン9やファルコンヘビーの商業打ち上げ拠点として計画されていました。しかし、スペースXの目標がより野心的なスターシップ計画へとシフトするにつれて、この地の役割も大きく変わりました。
軌道発射台1号の建設は、スターシップの軌道飛行試験を実現するための最重要プロジェクトとして進められました。巨大な発射タワーの建設は世界中の宇宙ファンの注目を集め、その建設プロセス自体がライブカメラなどで日々配信されました。
2023年4月20日、スターシップとスーパーヘビーを統合した「フルスタック」での初の軌道飛行試験(IFT-1)が、この発射台から行われました。打ち上げには成功したものの、機体は数分後に飛行を中断しました。この打ち上げでは、ロケットエンジンの強力な噴射により発射台下部に大きな損傷が発生したため、その後、大量の水を噴射して衝撃を和らげる水冷式フレームディフレクターが大規模に増設されました。
以降、この発射台はスターシップの開発計画の心臓部として機能し、数々の改良と試験が繰り返されています。打ち上げのたびに得られるデータは、機体だけでなく地上支援設備の改良にも活かされており、軌道発射台1号はスターシップと共に進化を続けています。
関連ウェブサイト
- SpaceX 公式サイト: https://www.spacex.com/
- Starship 公式ページ: https://www.spacex.com/vehicles/starship/
- Starbase, Texas 公式サイト: https://www.starbase.texas.gov/
- NASASpaceFlight: https://www.nasaspaceflight.com/ (詳細な技術情報や解説記事)
- Spaceflight Now: https://spaceflightnow.com/ (宇宙関連ニュースサイト)