獅子座流星群 (Leonids Meteor Shower)
獅子座流星群は、毎年11月中旬から下旬にかけて観測できる流星群です。その名の通り、春の星座である「しし座」の方向(頭部付近)に放射点(流星が飛び出してくるように見える中心点)を持っています。
この流星群の最大の特徴は、「流星のスピードが非常に速い」ことです。地球が彗星の軌道に正面から突っ込むような形で交差するため、流星物質が猛烈な速度で地球の大気に衝突します。そのため、明るく輝く流星が多く、痕(こん)と呼ばれる煙のような筋が数秒から数分間残ることがあります。
また、獅子座流星群は歴史的に「流星雨(りゅうせいう)」と呼ばれる、雨のように降り注ぐ大出現を繰り返してきたことで有名です。特に2001年の日本での大出現は、1時間に数千個もの流星が流れ、多くの人々の記憶に刻まれています。現在は静穏な時期に入っていますが、依然として明るい火球が見られるチャンスのある、注目の流星群です。
【もっと詳しく】
ここからは、より天文学的・専門的な視点で解説します。
1. 母天体と33年周期 獅子座流星群の母天体(流星の元となるチリを放出している彗星)は、テンペル・タットル彗星 (55P/Tempel-Tuttle) です。この彗星は約33年の周期で太陽の周りを回っています。 彗星が太陽に近づく(回帰する)際、大量のチリ(ダスト)を放出します。このチリの帯(ダスト・トレイル)の中に地球が突入することで、流星群活動が活発化します。そのため、獅子座流星群は「約33年ごとに大出現する可能性がある」と言われています。
2. 衝突速度と発光メカニズム 獅子座流星群の対地速度(地球の大気に対する突入速度)は、秒速約 71km にも達します。これは主要な流星群の中で最も速い部類に入ります(参考:ふたご座流星群は約35km/s)。 運動エネルギーは速度の2乗に比例するため、小さなチリであっても衝突時のエネルギーは強大です。これにより、高温で発光し、青白く、あるいは緑色に見えるほどの明るい流星(火球)が発生しやすくなります。また、上空の風に流されながら光り続ける「永続痕」が観測されるのも、この高速衝突によるものです。
3. 現在の活動状況 1998年から2002年にかけての世界的な大出現の後、母天体であるテンペル・タットル彗星は遠ざかっており、現在は活動が落ち着いている時期(静穏期)です。通常の年であれば、極大時(ピーク時)の1時間あたりの出現数(ZHR)は10個〜15個程度です。 次回の彗星回帰は2031年頃と予想されており、その前後の数年間は再び活動が活発化する可能性があります。
関連用語リスト
- しし座 (Leo / Constellation Leo)
- 放射点 (Radiant / Radiant point)
- テンペル・タットル彗星 (Comet Tempel-Tuttle / 55P/Tempel-Tuttle)
- 流星嵐 (Meteor storm)
- 流星痕 (Meteor train / Persistent train)
- 火球 (Fireball / Bolide)
- 天頂出現数 (ZHR / Zenithal Hourly Rate)
- ダスト・トレイル (Dust trail)
