西昌衛星発射センター 第2射場 (LC-2)
西昌衛星発射センター 第2射場 (Launch Complex 2, LC-2)は、中華人民共和国・四川省にある西昌衛星発射センター (XSLC) に位置する、現役のロケット発射施設です。主に静止トランスファ軌道 (GTO) への商業衛星や測位衛星、月探査機などの打ち上げに使用されています。
概要
LC-2は、西昌衛星発射センターに建設された2つの主要な発射台のうちの一つです(もう一つはLC-3)。中国の主力大型ロケットである長征3号 (Long March 3) シリーズの打ち上げに対応しており、特に重量のある静止衛星の打ち上げミッションを担う、中国の宇宙開発における重要な施設の一つです。
発射台には、ロケットの組み立て、点検、燃料充填を行うための固定式アンビリカルタワー(勤務塔)が備わっています。
基本データ
- 施設名称: 第2射場 (Launch Complex 2 / LC-2 / LA-2)
- 所在地: 中華人民共和国 四川省 涼山イ族自治州 西昌市(北西約64km)
- 所属機関: 西昌衛星発射センター (Xichang Satellite Launch Center, XSLC)
- 運用機関: 中国航天科技集団 (CASC)
- 座標: 28°14’43.8″N 102°01’36.4″E
- 状態: 現役 (Active)
- 主な使用ロケット:
- 長征2号E (CZ-2E)
- 長征3号A (CZ-3A)
- 長征3号B (CZ-3B)
- 長征3号C (CZ-3C)
地図(航空写真)
歴史
建設と初期の打ち上げ
西昌衛星発射センターは、ソビエト連邦との国境から離れた内陸部に、より安全な発射場を確保する目的で1970年代に建設が始まりました。LC-2は、中国初の有人宇宙計画「714計画」(曙光1号)のために計画された射場のうち、実際に建設された施設の一つです(当初計画されたLC-1は建設中止)。
LC-2からの最初の打ち上げは、1990年7月16日に行われた長征2号Eロケットの試験飛行で、パキスタンの衛星「Badr-A」などを軌道に投入しました。
商業衛星打ち上げと事故
1990年代、LC-2は中国が国際的な商業衛星打ち上げ市場に参入するための主要な拠点となりました。しかし、この時期には重大な事故も経験しています。
- 1995年1月25日: 長征2号Eロケットが、通信衛星「Apstar 2」の打ち上げに失敗。ロケットは打ち上げ直後に爆発しました。
- 1996年2月15日: LC-2の歴史上、最も重大な事故が発生しました。新型の長征3号Bロケット(最初の飛行)が、通信衛星「インテルサット708」を搭載して打ち上げられました。しかし、ロケットは打ち上げからわずか数秒後に制御を失い、発射台から約1.8km離れた村に墜落、爆発しました。この事故により、公式発表では地上で6人が死亡、57人が負傷したとされていますが、実際の被害はこれを上回るとも言われています。
現在の運用
事故後、原因究明とロケットの信頼性向上が図られ、LC-2は長征3号シリーズの主要な発射台として運用が続けられました。
現在に至るまで、中国の静止通信・放送衛星、気象衛星「風雲」シリーズ、測位衛星「北斗」システムの多くの衛星、そして月探査機「嫦娥(じょうが)」シリーズ(※)の打ち上げにも使用され、中国の宇宙開発プログラムにおいて不可欠な役割を果たし続けています。
(※ 嫦娥計画の打ち上げは、隣接するLC-3が月探査用に改修されて以降は、そちらが主に使用されています)