中国の宇宙開発を支える発射拠点:酒泉衛星発射センター第4発射台(SLS-2 / 603)
ゴビ砂漠の広大な地に位置する酒泉衛星発射センターは、中国の宇宙開発の歴史そのものと言える重要な拠点です。その中でも「第4発射台(Launch Area 4, LA-4)」は、現在の中国における衛星打ち上げミッションの大部分を担う、極めて活発な射場です。本記事では、特に無人衛星の打ち上げを専門とするSLS-2 / 603発射パッドに焦点を当て、その詳細と役割を解説します。
基本データ
項目 | 詳細 |
正式名称 | Launch Area 4 (SLS-2 / 603), LC-43/94 |
通称 | 南発射場 (South Launch Site)、尖兵発射台 (Jianbing Pad) |
所属 | 酒泉衛星発射センター (Jiuquan Satellite Launch Center) |
場所 | 中華人民共和国 甘粛省酒泉市と内モンゴル自治区の境界付近 |
座標 | 北緯40度57分28秒 東経100度17分30秒 (センター代表座標) |
運用開始 | 2003年11月3日 |
主な用途 | 無人人工衛星の打ち上げ |
MAP
第4発射台の概要と二つの顔
第4発射台は、通称「南発射場(South Launch Site, SLS)」とも呼ばれ、機能が異なる2つの発射パッド(Launch Pad)から構成されています。
- SLS-1 / 921:中国の有人宇宙開発の象徴です。1999年に運用を開始し、有人宇宙船「神舟」シリーズや宇宙ステーション「天宮」の打ち上げに特化して使用されます。対応ロケットは長征2号Fです。
- SLS-2 / 603:この記事の主役であり、多種多様な無人衛星の打ち上げを担います。2003年から運用されており、その打ち上げ頻度の高さが特徴です。
このように、第4発射台は「有人」と「無人」という二つの重要な役割を分担することで、中国の宇宙開発計画を効率的に支えています。
SLS-2 / 603発射台詳説
🚀 主な対応ロケットとミッション
SLS-2 / 603は、信頼性の高い液体燃料ロケットである長征ロケットシリーズの打ち上げに対応しています。
- 長征2号C (CZ-2C)
- 長征2号D (CZ-2D)
- 長征4号B (CZ-4B)
- 長征4号C (CZ-4C)
これらのロケットを用いて、地球観測衛星、通信衛星、科学衛星、軍事偵察衛星など、様々な人工衛星を低軌道(LEO)や太陽同期軌道(SSO)へと送り出してきました。2003年11月3日の長征2号Dによる初の打ち上げ以来、現在までに100回を超える打ち上げを成功させており、世界で最も活発な発射パッドの一つです。
🏗️ 構造と運用方式
SLS-2 / 603は、鉄筋コンクリート製の固定されたアンビリカルタワー(ロケットに電力や推進剤を供給する塔)と、単一のフレームダクト(ロケットエンジンの噴射炎を逃がす溝)を持つ、比較的シンプルな構造です。
その運用は「垂直組立方式」と呼ばれる伝統的な手法を採用しています。これは、ロケットの各段(1段目、2段目、フェアリングなど)をクレーンで吊り上げ、発射台の上で直接組み立てていく方式です。組み立てから点検、燃料充填、そして打ち上げまで、すべての工程がこの場所で行われます。
中国の宇宙開発における戦略的拠点
酒泉衛星発射センターは、1958年に設立された中国初の総合ミサイル実験基地を前身とし、1970年には中国初の人工衛星「東方紅1号」を打ち上げた歴史的な場所です。
内陸の乾燥地帯に位置するため、天候が安定しており、年間を通じて打ち上げに適した日が多いという地理的利点があります。SLS-2 / 603は、この恵まれた環境の下で、中国の経済発展、安全保障、科学技術の進歩に不可欠な多種多様な衛星を宇宙へ送り届けるという、極めて重要な役割を担い続けています。