「あのホンダが、ついに宇宙へ――。」
自動車やバイクでお馴染みの本田技研工業(ホンダ)が今、宇宙開発という新たなフロンティアに本気で挑んでいます。
2025年6月には、自社開発ロケットの離着陸実験に成功。そのニュースに驚いた方も多いのではないでしょうか。
この記事では、
- なぜ自動車メーカーのホンダが宇宙を目指すのか?
- 具体的にどんなプロジェクトが進んでいるの?
- ロケット開発は今、どこまで来ているの?
といった気になるポイントを、最新情報を交えながら一つひとつご紹介します。この記事を読めば、ホンダが宇宙で何を実現しようとしているのか、その全体像が見えてくるはずです。
なぜホンダは宇宙を目指すのか?その理由は技術の進化にあった
ホンダと聞けば、多くの人が高性能なエンジンやASIMOのようなロボット、そして空飛ぶHondaJetを思い浮かべるでしょう。実は、ホンダの宇宙への挑戦は、これらの事業で培ってきた技術の延長線上にあります。
- F1などで極めた「燃焼・制御技術」
- ASIMOや自動運転で磨いた「ロボティクス技術」
- 持続可能な社会を目指す「クリーンエネルギー技術」
これらホンダのDNAとも言える技術を結集し、「人の活動領域を拡げ、可能性を解放する」という夢の実現の場として、宇宙を見据えているのです。陸、海、空、そして宇宙へ。ホンダのチャレンジは自然なステップと言えるのかもしれません。
ホンダ宇宙事業の核心!注目の3大プロジェクト
現在、ホンダの宇宙事業は、主に3つの大きなプロジェクトを軸に進められています。これらは互いに連携し、未来の宇宙での活動を支えることを目指しています。
① 再利用型ロケット|宇宙への道を、もっと身近に【最新情報】
世界の宇宙ビジネスで今、最も熱い分野の一つが「小型人工衛星」の打ち上げです。ホンダは、この需要に応えるため、低コストで衛星を届けられる「再利用型小型ロケット」の開発に取り組んでいます。
ロケットを使い捨てにせず、打ち上げ後に機体を回収・整備して再び打ち上げることで、コストを劇的に下げるのが狙いです。
【2025年6月 最新NEWS】 この開発において、大きな進展がありました。ホンダは自社開発の実験機「HFR-1」の垂直離着陸(VTVL)飛行試験に成功。目標地点からわずか37cmという驚異的な精度での着陸は、ホンダが誇る誘導制御技術の高さを証明しました。

今後の目標は2029年までの宇宙空間(準軌道)到達。日本の民間企業による宇宙輸送サービスが、現実の選択肢となる日もそう遠くはなさそうです。
② Hondaアバターロボット|月面で活動する、人間の“分身”
未来の月面基地建設や資源探査では、危険を伴う作業が数多く発生します。そこで活躍が期待されるのが、ホンダの「アバターロボット」です。
これは、人が安全な場所から遠隔で操作できる、いわば人間の“分身”。ヒューマノイドロボット「ASIMO」で培った高度なバランス技術を応用し、まるで自分の手足のように動かすことができます。
特に、人間の指のように繊細な動きができる「多指ハンド」は、工具を使ったり、石や砂のサンプルを採取したりと、月面での複雑なミッションを可能にします。宇宙飛行士の安全を守りながら、探査の質を大きく向上させる技術として注目されています。
③ 循環型再生エネルギーシステム|宇宙でエネルギーを自給自足する
人が宇宙で長く活動するためには、電力、呼吸用の酸素、そしてロケットの燃料などを現地で作り出す必要があります。ホンダは、この究極の課題を解決するため、JAXA(宇宙航空研究開発機構)と共に「循環型再生エネルギーシステム」の研究を進めています。
このシステムのアイデアは非常にスマートです。
- 月の豊富な太陽光で発電し、その電力で水を「酸素」と「水素」に分解します。
- 生成した酸素は生命維持に、水素は燃料として貯蔵します。
- 太陽光が使えない夜間は、貯蔵した水素と酸素を使い、ホンダ得意の燃料電池(FC)技術で発電します。
このサイクルを回すことで、太陽光と水さえあれば、エネルギーと生命維持に不可欠な物質を生み出し続けることができます。まさに宇宙での自給自足生活を実現する“心臓部”となる技術です。
ホンダが見つめる、宇宙と地上の未来
ホンダの宇宙への挑戦は、単に新しい事業を始めるということだけではありません。
ロケットで宇宙へのアクセスを民主化し、ロボットで人の活動領域を広げ、エネルギー技術で持続可能な社会を宇宙に築く。これらの取り組みは、すべて地上で磨き上げてきた技術の応用であり、未来のモビリティと社会を豊かにするというビジョンに繋がっています。
ホンダが描く宇宙の夢が、私たちの未来をどう変えていくのか。その挑戦の物語は、まだ始まったばかりです。