HANBIT Pad (アルカンタラ宇宙センター)
HANBIT Pad(ハンビッ・パッド)は、ブラジル連邦共和国マラニョン州に位置するアルカンタラ宇宙センター(Alcântara Space Center: CLA)内にあるロケット発射施設です。
韓国の航空宇宙スタートアップ企業「INNOSPACE(イノスペース)」社が、同社の小型衛星打上げロケット「HANBIT(ハンビッ)」シリーズを運用するために、ブラジル空軍(FAB)およびブラジル航空宇宙局(AEB)とのパートナーシップに基づき使用しています。
この発射台は、ブラジルの地理的優位性(赤道直下)と韓国の民間ロケット技術を組み合わせた、南米における商業宇宙輸送の新たな拠点となっています。

基本データ
| 項目 | 詳細 |
| 施設名称 | HANBIT Pad (Innospace専用発射台) |
| 所在地 | ブラジル連邦共和国 マラニョン州 アルカンタラ宇宙センター (Centro Espacial de Alcântara: CEA) |
| 地理座標 | 2°19’01.1″S 44°22’07.4″W |
| 運用組織 | INNOSPACE (韓国) |
| 協力機関 | ブラジル空軍 (Força Aérea Brasileira: FAB) ブラジル航空宇宙局 (Agência Espacial Brasileira: AEB) |
| 主要ロケット | HANBIT-TLV (技術実証機) HANBIT-Nano (小型衛星ランチャー) |
| 目的 | ハイブリッドロケット技術を使用した小型衛星の商業軌道投入 |
Google Map(航空写真)
アルカンタラ宇宙センター内にあるINNOSPACEの専用発射台(HANBIT Pad)の位置を示します。
歴史
商業利用への開放
アルカンタラ宇宙センター(CLA)は、赤道に最も近い(南緯約2.3度)ロケット発射場の一つであり、地球の自転を最大限に利用できる地理的利点を持っています。この利点を活かすため、ブラジル政府は2019年に米国との間で技術防護協定(AST)を締結。これにより、CLAの施設を海外の民間企業が商業的に利用する道が開かれました。
INNOSPACEとの提携
この動きを受け、韓国の民間企業INNOSPACEはブラジル空軍(FAB)と契約を結び、CLA内に同社専用の発射台(HANBIT Pad)を設置しました。これは、ブラジル政府が推進する「Operação Astrolábio(アストロラーベ作戦)」の一環であり、ブラジル国内の宇宙産業エコシステムを活性化させることも目的としています。
HANBIT-TLV:歴史的な初の民間打ち上げ
- 2022年12月: INNOSPACEは、技術実証機である準軌道ロケット「HANBIT-TLV」の垂直試験(Wet Dress Rehearsal)に成功しました。
- 2023年3月19日: HANBIT-TLVが、HANBIT Padからの打ち上げに成功しました。この打ち上げは、アルカンタラ宇宙センター(CLA)にとって500回目の打ち上げであると同時に、ブラジルの領土から民間企業によって行われた史上初のロケット打ち上げという歴史的なマイルストーンとなりました。ロケットはブラジル空軍の慣性航法システム「SISNAV」をペイロードとして搭載し、ハイブリッドエンジン(液体酸素とパラフィンベースの固体燃料)の飛行性能実証に成功しました。
商業軌道打ち上げへ
2023年の成功を受け、INNOSPACEは2025年後半に、初の商業軌道打ち上げロケット「HANBIT-Nano」の打ち上げを同パッドから計画しています。
