ブラックホール (Black Hole)
ブラックホールとは、宇宙に存在する、極めて高密度で質量が非常に大きく、強力な重力を持つ天体または領域のことです。その重力はあまりにも強力なため、物質だけでなく、光(電磁波)さえも一度その引力圏に入ると脱出することができなくなります。
光が出てこないため、その姿を直接観測することはできず、背景から来る光を遮る「黒い影」のように見えます。
ブラックホールの多くは、太陽よりもはるかに質量の大きな星が、その一生の最後に重力崩壊(自らの重力によって潰れる現象)を起こすこと(超新星爆発の後など)で形成されると考えられています。
また、私たちの天の川銀河を含む、ほとんどの銀河の中心部には、太陽の数百万倍から数十億倍もの質量を持つ「超大質量ブラックホール」が存在することが確実視されています。
【もっと詳しく】
ブラックホールは、アインシュタインの一般相対性理論によって、その存在が理論的に予言されました。
ブラックホールの「境界」、すなわち「入ったら二度と出られない」境界線のことを「事象の地平面」(Event Horizon)と呼びます。この境界の大きさ(半径)は「シュバルツシルト半径」と呼ばれ、ブラックホールの質量に比例して大きくなります。
事象の地平面の内側に入った物質は、やがて中心にある一点(またはリング状)に無限に押しつぶされると考えられており、この点を「特異点」(Singularity)と呼びます。特異点では、密度と時空の曲率が無限大になると理論上は考えられています(ただし、これは量子重力理論の完成によって解明されるべき課題とされています)。
また、ブラックホールは「吸い込むだけ」と考えられがちですが、スティーヴン・ホーキング博士は、量子力学的な効果によってブラックホールが微弱な放射(ホーキング放射)を放ち、非常に長い時間をかけて蒸発する可能性があることを提唱しました。
2019年には、国際協力プロジェクトであるイベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)によって、M87という銀河の中心にある超大質量ブラックホールの「影」が、史上初めて直接撮影され、その存在が視覚的にも証明されました。
関連用語リスト
- 重力崩壊 (Gravitational collapse)
- 超新星爆発 (Supernova)
- 超大質量ブラックホール (Supermassive black hole, SMBH)
- 一般相対性理論 (General relativity)
- 事象の地平面 (Event horizon)
- シュバルツシルト半径 (Schwarzschild radius)
- 特異点 (Singularity)
- ホーキング放射 (Hawking radiation)
- イベント・ホライズン・テレスコープ (Event Horizon Telescope, EHT)
