2026年にも打ち上げが予定されている、アポロ計画以来約半世紀ぶりの有人月周回ミッション「アルテミス2」。世界中が注目するこの歴史的な飛行で、4人の宇宙飛行士が搭乗する新型宇宙船「オリオン」の愛称が「Integrity(インテグリティ)」と発表されました。

宇宙船「Integrity」命名の経緯とクルーの想い
この「Integrity」という名前は、アルテミス2号に搭乗する4人の宇宙飛行士(NASA:リード・ワイズマン船長、ビクター・グローバー飛行士、クリスティーナ・コック飛行士、カナダ宇宙庁:ジェレミー・ハンセン飛行士)によって選ばれました。
Integrityは、「誠実さ」「高潔さ」「完全性」を意味する英単語です。
クルーの発表によれば、この名前はミッション成功に不可欠な「信頼、敬意、率直さ、謙虚さ」という価値観を体現しています。これはクルー4人だけでなく、この歴史的ミッションを支えるNASA、カナダ宇宙庁、そして世界中の何千人ものエンジニア、科学者、技術者チーム全員の間に存在する強固な基盤を示すものです。
さらに、30万点以上とも言われる宇宙船のコンポーネントや、国境を越えた多様なチームが一体となって取り組む「広範な統合的努力(Integrated effort)」への敬意も込められています。
「Integrity」の名は、技術的な完全性だけでなく、人類が再び月を目指すという偉業を成し遂げるための「人間の誠実な結束」の象徴なのです。
アルテミス2号とは? ミッションの全貌
アルテミス2号は、人類を再び月面に着陸させる「アルテミス計画」の第2ステップにあたるミッションです。2022年のアルテミス1号(無人飛行試験)の成功を受け、いよいよ人間を乗せて月へと向かいます。
アポロ以来、約半世紀ぶりの「有人月周回」
アルテミス2号の最大の目的は、1972年のアポロ17号以来、実に約50年ぶりに人類が月を周回することです。
- 目的: オリオン宇宙船の生命維持システムや航行能力など、有人での性能を実証するテスト飛行。
- 期間: 約10日間の飛行が予定されています。
- 飛行ルート: 地球の軌道から月へ向かい、月の裏側をフライバイ(通過)した後、地球へ帰還します。月面への着陸は行われません。
- ロケット: アルテミス1号同様、世界最強のロケット「SLS(スペース・ローンチ・システム)」で打ち上げられます。
- 打ち上げ予定: 2026年2月以降(2025年10月時点の情報)が目標とされています。
このミッションの成功が、アルテミス3号(人類の月面着陸)への道を開くことになります。
歴史を刻む4人の宇宙飛行士
アルテミス2号には、多様性を象徴する4人のクルーが搭乗します。
- リード・ワイズマン (NASA): 船長。元海軍戦闘機パイロットで、ISS(国際宇宙ステーション)長期滞在の経験を持つ。
- ビクター・グローバー (NASA): パイロット。ISS長期滞在経験者。月ミッションに参加する初の黒人宇宙飛行士となる。
- クリスティーナ・コック (NASA): ミッションスペシャリスト。女性としての宇宙連続滞在記録(328日)を持ち、月ミッションに参加する初の女性宇宙飛行士となる。
- ジェレミー・ハンセン (カナダ宇宙庁): ミッションスペシャリスト。元戦闘機パイロットで、カナダ人として初めて月へ飛行する。
宇宙船「Integrity」の名に込められたのは、技術への信頼だけでなく、ミッションに関わるすべての人々への「誠実な敬意」でした。
クリスティーナ・コック飛行士、そしてジェレミー・ハンセン飛行士という、女性初・カナダ人初のクルーが参加するアルテミス2号は、技術的なマイルストーンであると同時に、宇宙開発が新たな多様性の時代に入ったことを示す象徴的なミッションでもあります。
