アリアン第1射場(ELV):ギアナ宇宙センターの歴史的発射台
ギアナ宇宙センター(フランス領ギアナ) に位置するアリアン第1射場(Ariane Launch Area 1、ELA-1)、現在はヴェガ射場(Ensemble de Lancement Vega、ELV)として知られるこの施設は、ヨーロッパの宇宙開発の歴史において極めて重要な役割を果たしてきました。数々の歴史的な打ち上げの舞台となったこの射場は、現在もヨーロッパの宇宙へのアクセスを支える現役の施設です。
概要
アリアン第1射場(ELV)は、南米フランス領ギアナのクールーにあるギアナ宇宙センター内に位置するロケット発射施設です。もともとはヨーロッパロケット開発機構(ELDO)の「ヨーロッパ II」ロケットのために建設されましたが、その後、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の「アリアン」ロケットシリーズの最初の発射台として改修されました。アリアン1、2、3の打ち上げを成功させた後、2000年代に「ヴェガ」ロケットに対応するために再び改修され、ELV(Ensemble de Lancement Vega)と改称されました。現在では、小型衛星の打ち上げに特化したヴェガおよびその後継機ヴェガCの打ち上げ拠点となっています。
基本データ
項目 | 詳細 |
名称 | アリアン第1射場 (Ariane Launch Area 1, ELA-1) / ヴェガ射場 (Ensemble de Lancement Vega, ELV) |
場所 | ギアナ宇宙センター、フランス領ギアナ |
座標 | 北緯5度14分10秒 西経52度46分30秒 |
運用者 | アリアンスペース (Arianespace) |
主要な打ち上げ機 | ヨーロッパII, アリアン1, アリアン2, アリアン3, ヴェガ, ヴェガC |
現状 | 運用中 |
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歴史
ヨーロッパロケットからの継承 (BEC)
この射場の起源は、ヨーロッパロケット開発機構(ELDO)がヨーロッパ独自の衛星打ち上げ能力の獲得を目指した「ヨーロッパ」ロケット計画に遡ります。当初、「Base Équatoriale du CECLES (BEC)」として建設され、1971年11月5日にヨーロッパIIロケットの唯一の打ち上げが行われましたが、この打ち上げは失敗に終わりました。
アリアン計画の幕開け (ELA-1)
ヨーロッパ計画の失敗後、ヨーロッパの宇宙開発の主導権は新たに設立された欧州宇宙機関(ESA)に移り、より信頼性の高い「アリアン」ロケットの開発が開始されました。BECの施設はアリアンロケットに対応するために大幅に改修され、「Ensemble de Lancement Ariane 1 (ELA-1)」として生まれ変わりました。
1979年12月24日、アリアン1の記念すべき初打ち上げがこのELA-1から成功し、ヨーロッパは自律的な宇宙へのアクセス手段を確保しました。その後、ELA-1は改良型のアリアン2(1986年初打ち上げ)とアリアン3(1984年初打ち上げ)の打ち上げにも使用され、合計で25機のアリアンロケットがここから宇宙へと旅立ちました。
ヴェガへの転身 (ELV)
1989年のアリアン3の最終打ち上げを最後にELA-1は一旦その役目を終えましたが、2000年代に入り、ESAが小型衛星打ち上げ市場への参入を目指して新型の「ヴェガ」ロケットを開発したことに伴い、この歴史的な射場が再び注目されることになりました。
ELA-1はヴェガロケットの運用に最適化するための改修工事を受け、「Ensemble de Lancement Vega (ELV)」と改称されました。この改修では、アリアン時代のフレームトレンチ(発射時の噴射炎を逃がす溝)を再利用しつつ、ロケットの組み立てや整備を行うための新しい移動式整備塔などが建設されました。そして2012年2月13日、ヴェガロケットの初号機がELVからの打ち上げに成功し、射場は新たな歴史を歩み始めました。現在では、後継機であるヴェガCの打ち上げも行われています。
関連ウェブサイト
- ギアナ宇宙センター (Centre Spatial Guyanais – CNES): https://centrespatialguyanais.cnes.fr/en
- アリアンスペース (Arianespace): https://www.arianespace.com/
- 欧州宇宙機関 (ESA): https://www.esa.int/