ケンタウルス座アルファ星 (Alpha Centauri)
ケンタウルス座アルファ星は、地球が属する太陽系から最も近い場所にある恒星系(こうせいけい:星の集まり)です。地球からの距離は約4.24〜4.37光年しかなく、広大な宇宙の中では「最も近いお隣さん」と言える存在です。
この星系は、実は1つの星ではなく、以下の3つの恒星が重力で結びついた「三重連星系」(さんじゅうれんせいけい)として知られています。
- アルファ・ケンタウリA星: 太陽(G型星)と非常によく似た、黄色く輝く星です。
- アルファ・ケンタウリB星: 太陽より少し小さく、オレンジ色に見えるK型星です。
- プロキシマ・ケンタウリ: A星とB星のペアから少し離れた場所にある、非常に暗く小さなM型星(赤色矮星)です。
この3つの星のうち、現在、太陽系に最も近い距離(約4.24光年)にあるのがプロキシマ・ケンタウリです。そのため、「太陽系に一番近い恒星」として非常に有名です。
さらに近年、このプロキシマ・ケンタウリの周りを公転する太陽系外惑星が発見され、大きな注目を集めました。特に「プロキシマ・ケンタウリb」と呼ばれる惑星は、地球と似たような岩石でできている可能性があり、なおかつ「ハビタブルゾーン(生命居住可能領域)」と呼ばれる、水が液体で存在できるかもしれない絶妙な距離を周回していることがわかっています。「地球から最も近い、生命が存在しうる惑星」として、将来の探査計画の最有力候補となっています。
【もっと詳しく】
ケンタウルス座アルファ星系は、南半球の夜空で非常に明るく見える星(見かけの等級は-0.27等)ですが、その実態は複雑な三重連星系です。
- アルファ・ケンタウリA星(リギル・ケンタウルス): 分類はG2V型で、太陽とほぼ同じスペクトル型を持つ主系列星です。質量は太陽の約1.1倍、明るさは約1.5倍です。
- アルファ・ケンタウリB星(トリーマン): 分類はK1V型の主系列星です。質量は太陽の約0.9倍、明るさは太陽の約半分程度です。
- A星とB星は、お互いの共通重心の周りを約79.9年周期で公転する連星(バイナリ)を形成しています。
- プロキシマ・ケンタウリ (Proxima Centauri): A星・B星のペアから約13,000天文単位(AU)、光年にして約0.2光年も離れた軌道を周回していると考えられています(ただし、本当に重力的に束縛されているかについては長年議論がありました)。分類はM5.5Ve型の赤色矮星 (Red Dwarf) で、質量は太陽の約12%しかなく、非常に暗いため肉眼では観測できません。
惑星系の詳細と課題 2016年に発見されたプロキシマ・ケンタウリbは、地球の最低質量の約1.17倍と推定される岩石惑星(地球型惑星)です。主星プロキシマ・ケンタウリからわずか0.05AU(太陽〜地球間の20分の1)の距離を約11.2日で公転しています。主星が暗い赤色矮星であるため、この至近距離がハビタブルゾーン内に収まっています。
しかし、プロキシマ・ケンタウリのような赤色矮星は、表面で「恒星フレア(スーパーフレア)」と呼ばれる大規模な爆発現象を頻繁に起こすことが知られています。この強力なX線や紫外線、荷電粒子が惑星の大気を剥ぎ取ったり、地表の生命にとって過酷な環境を作り出したりしている可能性が指摘されており、生命存在の可能性については議論が続いています。
この星系は太陽系に最も近いため、将来の恒星間航行(Interstellar Travel)の最初の目的地として最有力視されており、「ブレイクスルー・スターショット」計画など、超小型探査機を送り込む構想も具体的に研究されています。
