英語訳: Absolute Magnitude
絶対等級とは、天体の「真の明るさ」を示すための尺度のことです。地球から見たときの明るさである「見かけの等級」とは異なり、すべての天体を10パーセク(約32.6光年)という決められた距離から見たと仮定したときの明るさを表します。
たとえば、すぐ近くにある暗い電球と、遠くにある非常に明るい電球を考えてみましょう。地球から見ると、近くの暗い電球の方が明るく見えるかもしれません(これが見かけの等級です)。しかし、もし両方の電球を同じ距離、例えば10m先から見比べれば、どちらが本当に明るい電球なのかが一目瞭然です。絶対等級は、これと同じ考え方を天体に適用したもので、天体そのものが放つ光の強さを比較するための統一された基準となります。
この絶対等級を使うことで、天文学者たちは星の本来の性質(大きさ、温度、年齢など)をより正確に理解することができます。
【もっと詳しく】
絶対等級(M)は、見かけの等級(m)と、その天体までの距離(d、パーセク単位)がわかれば、以下の計算式(距離指数)によって求めることができます。
M = m – 5 log₁₀(d / 10)
この式は、天体の明るさが距離の2乗に反比例するという物理法則に基づいています。絶対等級は、天体の光度(Luminosity)、すなわち天体が単位時間あたりに放出する全エネルギーと直接的な関係があります。太陽の絶対等級は約4.8等ですが、リゲルのような青色超巨星は-7等を超え、太陽の何万倍も明るいことがわかります。
また、観測する光の波長によっても等級は変わるため、人間の目に最も明るく見える波長域で測定した絶対実視等級や、すべての波長の電磁波を合計したエネルギー量で評価する絶対放射等級(ボロメトリック等級)など、目的に応じていくつかの種類が使い分けられます。絶対等級は、恒星の進化や宇宙の距離を測定する上で欠かせない、極めて重要な物理量です。