Haiyang Spaceport (Sea Launch) / 東方航天港
概要
Haiyang Spaceport(海陽宇宙港)、通称「東方航天港(Oriental Space Port)」は、中華人民共和国山東省煙台市海陽市に位置する、中国初の海上打ち上げに特化した商業宇宙港です。陸上の射場とは異なり、船舶を利用して黄海などの海上プラットフォームからロケットを打ち上げることを目的としています。
この施設は、ロケットの研究開発、製造、打ち上げ、そして衛星データ利用までを一体化した総合的な宇宙産業拠点の中心として開発が進められています。海上打ち上げの最大の利点は、打ち上げ場所を柔軟に選択できることです。特に、赤道に近い低緯度の海域まで移動して打ち上げることにより、ロケットの搭載能力を最大限に活用でき、静止軌道への衛星投入などが効率的に行えます。
基本データ
項目 | 詳細 |
正式名称 | 東方航天港 (Oriental Space Port) |
通称 | Haiyang Spaceport (海陽宇宙港) |
場所 | 中国 山東省 煙台市 海陽市 |
運用者 | 中国航天科技集団 (CASC) など |
主な打ち上げロケット | 長征11号、Gravity-1 (引力1号) など |
主な用途 | 商業衛星の海上打ち上げ |
特徴 | 打ち上げ母港、ロケット製造・組立施設、衛星応用施設などを集約 |
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地図 (Google Map)
山東省海陽市周辺の航空写真です。東方航天港はこの沿岸地域に拠点を置いています。
歴史
Haiyang Spaceportの歴史は、国際的な商業打ち上げサービス「シーローンチ(Sea Launch)」のコンセプトと、中国独自の海上打ち上げ技術の発展という2つの流れから理解することができます。
シーローンチ社の歴史
シーローンチは元々、1995年にアメリカのボーイング社、ロシアのRSCエネルギア社、ウクライナのユージュノエ設計局、ノルウェーのクヴァナー社による国際共同事業として設立されました。赤道直下の太平洋上で、海上プラットフォーム「オーシャン・オデッセイ」からゼニット3SLロケットを打ち上げる画期的なサービスでしたが、2009年に経営破綻。その後、ロシア企業に買収されましたが、ウクライナ情勢などにより活動は凍結状態となりました。
東方航天港の設立
一方、中国は独自の海上打ち上げ能力を開発し、2019年6月に初めて黄海からの長征11号ロケットの打ち上げに成功しました。この成功を受け、海上打ち上げの恒久的な拠点として、山東省海陽市に「東方航天港」の建設を本格化させました。
このプロジェクトは2019年頃から始動し、海上打ち上げの準備、ロケットの組み立て、整備を行うための母港として整備が進められました。現在では、中国の商業宇宙企業(Orienspaceなど)による打ち上げも行われており、中国の宇宙開発における重要な拠点の一つとなっています。