エスレンジ宇宙センター射場3B:欧州の再利用型ロケット技術の拠点
スウェーデン北部の広大な大地に位置するエスレンジ宇宙センターは、長年にわたり欧州の宇宙への玄関口として機能してきました。2023年1月13日、同センターは「スペースポート・エスレンジ」として新たな章を迎え、その中核をなすのが射場3(Launch Complex 3)です。特に射場3B(LC-3B)は、欧州の宇宙開発における次世代の鍵となる再利用型ロケットの試験に特化した、最先端の施設です。
概要
射場3Bは、垂直離着陸(VTVL – Vertical Takeoff, Vertical Landing)技術実証のために特別に設計された射場です。欧州宇宙機関(ESA)が主導する再利用型ロケットの実証機「テミス(Themis)」の試験拠点として、欧州の宇宙輸送技術の自律性と持続可能性を高める上で中心的な役割を担います。この施設は、将来の低コストで環境負荷の少ない宇宙へのアクセスを実現するための重要なステップとなります。
基本データ
項目 | 詳細 |
名称 | 射場3B (Launch Complex 3B) |
場所 | エスレンジ宇宙センター、スウェーデン、キルナ |
所属 | スウェーデン宇宙公社 (SSC) |
主な目的 | 再利用型ロケットの垂直離着陸(VTVL)技術試験 |
主要ユーザー | 欧州宇宙機関 (ESA) – テミス計画 |
発射台 | 40m x 40m コンクリートパッド |
主要施設 | ロケット組立棟 (LVIB)、推進剤貯蔵施設、地上支援装置、データ収集・制御センター |
座標 | 北緯67度53分 東経21度04分(エスレンジ宇宙センター全体) |
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歴史
エスレンジ宇宙センターは1966年の設立以来、観測ロケットや高高度気球の打ち上げ拠点として欧州の宇宙科学研究を支えてきました。軌道打ち上げ能力を持つ「スペースポート・エスレンジ」構想は長年検討されていましたが、近年の小型衛星市場の拡大と再利用型ロケット技術の進展を受け、2010年代後半から本格的に計画が進められました。
射場3を含む新施設の建設は2020年代初頭に始まり、2023年1月13日にスウェーデン国王カール16世グスタフ、欧州委員会委員長ウルズラ・フォン・デア・ライエンらを迎えて盛大な開所式が執り行われました。
射場3Bは、この新スペースポート計画の中でも特に未来志向の施設として位置づけられています。2025年には、ESAの再利用型ロケット実証機「テミス」がフランスから搬入され、地上試験を開始。同年9月には発射台に設置され、歴史的な初の「ホップテスト」に向けた準備が進められています。このテストは、欧州におけるロケットの再利用技術確立に向けた重要なマイルストーンとなります。
関連ウェブサイト
- Swedish Space Corporation (SSC): https://sscspace.com/
- ESA – Themis Programme: https://www.esa.int/Enabling_Support/Space_Transportation/Themis
- SALTO Project (Themis hop-tests): https://salto-project.eu/