活発化する民間による月面レース!
宇宙開発の最前線、民間企業による月面探査が今、大きな節目を迎えています。日本の宇宙スタートアップである株式会社ispaceは、進行中の「HAKUTO-R ミッション2」において、月周回軌道への到達という重要なマイルストーンを達成しました。これは、月面着陸に向けた最終段階の始まりを告げる快挙です。
この記事では、ispaceの「HAKUTO-R ミッション2」の最新状況、月周回軌道投入の成功について詳しく解説します。さらに、このミッションの次に続く「ミッション3」、「ミッション4」といった今後の月探査計画にも焦点を当て、ispaceが描く月面開発の未来をお届けします。
快挙!ispace HAKUTO-R ミッション2、月周回軌道へ到達
株式会社ispaceは、2025年5月7日(水)午前5時41分(日本時間)に、ミッション2において、月周回軌道投入マヌーバに成功し、RESILIENCEランダーの月周回軌道投入を完了しました。これにより、ispaceが設定したミッション2の10段階のマイルストーンのうち、Success 7を完了したことになります。
このマヌーバは、東京の日本橋にあるミッション・コントロール・センター(管制室)から運用されました。午前5時41分にミッション運用計画に沿って最初の月周回軌道投入マヌーバを開始し、9分間の主推進系の燃焼を完了しています。これは、ミッション2でこれまで実施してきた全9回のマヌーバの中で最も長時間の燃焼を要する、非常にクリティカルな運用でした。入念に準備を整えてマヌーバを実施したエンジニアたちは、予定通り月の重力圏への軌道投入が確認出来ると、緊張が解け安堵の表情を浮かべたとのことです。
ispaceの代表取締役CEO & Founderである袴田武史氏は、「本日、予定通りにRESILIENCEランダーが月周回軌道へ到達出来たことに安堵しております。ミッション1での運用経験を活かし、これまで順調にマヌーバを成功させてきましたが、今回最もクリティカルなマヌーバを成功させ、月周回軌道に投入を完了したクルーの姿をとても誇らしく思います。」とコメントしています。
この成功により、ispaceはミッション1に続き、ランダーとペイロードを月周回軌道上へ輸送する技術能力および運用能力を実証しました。そして、いよいよ月面着陸に向けたカウントダウンが開始されたのです。
RESILIENCEランダー、これまでの道のりと今後の予定
ミッション2で使用されている「RESILIENCEランダー」は、2025年1月15日(水)15時11分(日本時間)に、SpaceX社のFalcon9ロケットによって打ち上げられました。同日午後4時44分にロケットから分離され、地球周回フェーズを経て、約2ヶ月間の深宇宙の旅に出ました。
RESILIENCEランダーは、2025年2月15日(土)午前7時43分(日本時間)には、月表面から高度約8,400kmの
地点を通過し、民間企業による商業用の月着陸船としては史上初となる「月フライバイ」に成功しました。その後、低エネルギー遷移軌道上を長い期間かけて飛行し、地球から最も離れた距離では約110万kmの地点まで到達しています。
約2ヶ月間の深宇宙の旅を終え、月周回軌道に到達したRESILIENCEランダーには、様々なペイロードが搭載されています。これには、HAKUTO-Rのコーポレートパートナーである高砂熱学工業株式会社の月面用水電解装置、株式会社ユーグレナの月面環境での食料生産実験を目指した自己完結型モジュール、台湾の国立中央大学宇宙科学工学科が開発する深宇宙放射線プローブなどが含まれます。また、株式会社バンダイナムコ研究所の「GOI宇宙世紀憲章プレート」や、ispaceの欧州法人が開発したマイクロローバー「TENACIOUS」、スウェーデンのアーティストによるムーンハウスと呼ばれる赤い小さな家なども搭載されています。さらに、人類の言語と文化遺産を保護したユネスコのメモリーディスクも搭載されています。

月周回軌道投入に成功したRESILIENCEランダーは、今後、軌道制御マヌーバを続けていきます。計画されているすべての軌道制御マヌーバの完了は2025年5月28日頃を予定しており、その後の最短での月面着陸は2025年6月6日を予定しています。ispaceは、前回のミッション1で得られた貴重なデータやノウハウをミッション2へフィードバックしており、丁寧な運用と入念な準備を進めています。

未来へ続く挑戦:ispaceのミッション計画(ミッション3, 4)
ispaceの挑戦は、ミッション2だけではありません。同社はグローバル企業として、日・米・欧の3拠点を活かし、今後のミッション計画も着々と進めています。
ミッション2に続き、2026年には米国法人が主導する「ミッション3」を実行していく計画です。ミッション3では、より精度を高めた月面輸送サービスの提供を通じて、NASAが行う「アルテミス計画」にも貢献する計画です。
ミッション2に続き、2026年には米国法人が主導する「ミッション3」を実行していく計画です。ミッション3では、より精度を高めた月面輸送サービスの提供を通じて、NASAが行う「アルテミス計画」にも貢献する計画です。
さらに、2027年には「ミッション4」(旧ミッション6)を予定しています。ミッション4では、現在日本で開発中のシリーズ3ランダー(仮称)が使用される予定です。
ispaceは、これらの将来のミッションを通じて、世界中の政府、企業、教育機関からの高まる需要に応えるため、ペイロードサービス契約やデータサービスを提供していくとしています。
ispaceは、これらの将来のミッションを通じて、世界中の政府、企業、教育機関からの高まる需要に応えるため、ペイロードサービス契約やデータサービスを提供していくとしています。
ispaceとは?民間月面探査のパイオニア
ispaceは、「Expand our planet. Expand our future. 人類の生活圏を宇宙に広げ、持続性のある世界へ」をビジョンに掲げ、月面資源開発に取り組んでいる宇宙スタートアップ企業です。日本、ルクセンブルク、アメリカの3拠点で活動し、現在約300名のスタッフが在籍しています。
2010年に設立され、かつてGoogle Lunar XPRIZEレースの最終選考に残った5チームのうちの1チームである「HAKUTO」を運営しました。月への高頻度かつ低コストの輸送サービスを提供するための小型ランダーと、月探査用のローバーを開発しています。また、民間企業が月でビジネスを行うためのゲートウェイとなることを目指し、月市場への参入をサポートするための月データビジネスコンセプトの立ち上げも行っています。
2010年に設立され、かつてGoogle Lunar XPRIZEレースの最終選考に残った5チームのうちの1チームである「HAKUTO」を運営しました。月への高頻度かつ低コストの輸送サービスを提供するための小型ランダーと、月探査用のローバーを開発しています。また、民間企業が月でビジネスを行うためのゲートウェイとなることを目指し、月市場への参入をサポートするための月データビジネスコンセプトの立ち上げも行っています。
ispaceが行うミッション1およびミッション2は、「HAKUTO-R」という民間月面探査プログラムの総称です。HAKUTO-Rプログラムでは、独自のランダーとローバーを開発し、月面着陸と月面探査の2回のミッションを行います。2022年12月11日にはミッション1のランダーを打ち上げ、ミッション1では10段階のマイルストーンの内Success8まで成功を収め、着陸シーケンス中のデータを含め、月面着陸ミッション実現のための貴重なデータやノウハウを獲得しました。これらの経験が、現在のミッション2に活かされています。
ミッション2「SMBC x HAKUTO-R VENTURE MOON」は、オフィシャルパートナーである株式会社三井住友銀行により命名され、新たな始まりやチャンスという意味が込められています。その他にも多くの企業がHAKUTO-Rプログラムのパートナーとして参加しています。
月面着陸へ、いよいよ最終段階へ
ispaceの「HAKUTO-R ミッション2」は、RESILIENCEランダーの月周回軌道投入成功により、いよいよ月面着陸という最大の目標に向けた最終段階に入りました。約2ヶ月間の深宇宙の旅を乗り越え、多くの期待とペイロードを乗せたランダーは、最短2025年6月6日の着陸を目指します。
ミッション1の経験を活かし、技術力と運用能力を実証してきたispaceは、ミッション3、ミッション4と続く将来の計画も進め、民間による月面探査、そして月面資源開発という新たな時代の扉を開こうとしています。
今後のispaceの挑戦から目が離せません。月面着陸の成功、そしてその先の月での活動が、人類の生活圏を宇宙に広げる第一歩となるでしょう。
ミッション1の経験を活かし、技術力と運用能力を実証してきたispaceは、ミッション3、ミッション4と続く将来の計画も進め、民間による月面探査、そして月面資源開発という新たな時代の扉を開こうとしています。
今後のispaceの挑戦から目が離せません。月面着陸の成功、そしてその先の月での活動が、人類の生活圏を宇宙に広げる第一歩となるでしょう。